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アンソニー・ホールデン - グレアム・ヤング 毒殺日記

 イギリスの毒殺魔グレアム・ヤング(1947-90)について書かれたドキュメンタリー。図書館で目に付いたから借りた。おれノンフィクション買うの初めてなんだけど、とても読みやすく、なかなかよかった。ヤングの魅力を随所で匂わす一方、ひたすら賛美したりとかは決してせず、被害者の苦しみや社会的な問題もきっちり交えていて、誠実で公平な記録になっておりました。

 グレアム・ヤングの名前は、2005年ごろ母親にタリウム投与して殺そうとした女子高生の事件があったけど、その子の憧れてたのがこの殺人鬼ってことで、有名になったと思う。まあ気持ちは、わからんでもない。まず毒殺っていう殺害方法が、スマートでかっこいい。初めて殺人を犯したのが十代前半だから年も近くて共感しやすい。「実験・観察のため」って名目で親類や友達、同僚を平気な顔して手にかけてしまうところもしびれる。あとなにより、化学の知識がすごくて、頭の回転も速いのに、毒のことになると子どもみたいにはしゃいで見せる幼児性とのギャップがかわいらしくて、根暗な子からすると理想なんだろうな。

 現実は小説より奇なりというのは本当なんだな。近頃はもっとおかしな事件ばっかりだし、世の中はますます複雑になるし、小説家なんかはたいへんだろうと思った。

 評価:★★★★

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新井千裕 - 忘れ蝶のメモリー

 忘れ蝶なる蝶にとりつかれ記憶を失った恋人を助けようと、青年が奮闘する話。彼は謎の少年と一緒に帆立貝に入り、彼女の夢じみた奇天烈の記憶世界をたどっていく。また、田舎で彼女と酒びたりになり気ままに暮らす主人公の未来が、記憶世界の話と交互に語られる。

 かくかくしかじかで勉強教えてる子どもに教えてもらった本。前読んだ『容疑者Xの献身』は利発で生意気な女の子に勧めてもらったけど、今回は美形で変わり者の少年に勧めてもらった。

 変わり者がすすめてくるだけあって、内容もなかなかいかれてた。読みはじめあたりは、そのいかれ加減がすこしやりすぎに思えて、あざとかった。たとえば、とつぜん二次関数のグラフが現れたり、ページ全体に「雨」という漢字を並べて雨を表現したりと、描写が妙に前衛的。あと、登場人物の言動も、なんか全体的に狂ってた。大学の講義聴きながら爪かんで、全部噛み終えたもんで、隣座ってる女性の「噛みごろの芽のような」爪凝視してたら「よかったらどうぞ」って言われて、それがつきあうきっかけになるとかどんなんやねんっていう。忙しい人間に何の脈絡もなくボーリング勧めてきたり、意味なく町長のリコール始めたり、やたら警察がノリよかったりでわけわからん。わけわからんの好きやけど。でもおれそういうのは筒井康隆で免疫ついてしまったな。

 なので「子どものお気に入りやしこんなもんか、できるだけ良いとこ探して読んだろ」って感じやってんけど、途中からぐいぐい読ませてきて、ラスト前くらいまではかなり楽しかった。唐突過ぎて置いてきぼり食らう序盤を我慢して、娯楽作品らしくなる中盤まで行けてよかった。個人的には風が友達の話あたりがかなりツボで、そっから読むスピードも上がった。ああいうベタなファンタジー話好きです。

 と、すいすい読んでるうち、ラストあたりから徐々にSF臭がし始めて、そっからの展開はいまいち納得できんかった。うーん、煙に巻かれてしまった気分だな。オチを言うわけにはいかないからもう黙るけど、ああいう一切の発展性が望めないラストというのはな。オチまでのもっていきかたが少し強引だったから、ぽかんとしてしまったのもある。でもこの支離滅裂な話の決着には、いいちばんふさわしい幕切れだったか。まあ中盤が楽しかったしいいや。満足。

 こんな変わった話を、あの歳で読んでる彼には頭が下がります。おれなんかそのころ『ハリー・ポッター』も読んでなかったし。将来どうなるか楽しみ。

 評価:★★★

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夢野久作 - 犬神博士

 奇人で知られる「犬神博士」が語る自身の幼少時代、という形式の話。血の繋がらない父母と見世物をして回る乞食生活を強いられた美少年チイが、大人の世界のインチキや不条理に真正面から立ち向かう。

 久しぶりに、パワーで押してくるタイプの小説だった。明治あたりの、日本が戦争にこれから向かおうってときの、社会に漂う不穏な雰囲気と、それに対抗する民衆のエネルギーがぐるぐる入り混じって、下品だけど力のある話になってる。

 昔の日本のこういう空気、見てる分には憧れるな。異常に熱くて濃ゆい、人間のにおいのする空気や。ボロボロの着物きて、汚い荷物いっぱい背負って、「アネサンマチマチ」とかいう謎のエロ踊りやって生活して、インチキ博打やったり、サーベル持った髭の警官が怖かったり、知事さんがやたら偉かったり、暴力団の親分からまじで男気感じたり、盗みや放火がそんな珍しくなかったりする時代の、むさくるしくて汚い雰囲気が、気持ちいい。いまの時代は何にせよ薄っぺらくて、表面上は洗浄したみたいに無色透明やから、読んでたらほんと隣の芝。

 夢野久作の本にしては話のつくりが単純、博士の思い出を時系列順に並べてるだけ。基本的にコメディータッチで(はじめ表紙とタイトル見てホラーかと思った)、読みやすい。あと、夢野久作の文体がすごくいい。カタカナ・擬音多め、方言多用の、人を食ったように饒舌な文体が、こういう泥くさい話とあってて、ぐいぐい読ませてくる。

 最後、終わり方は「えーっ」となったけど、まあこれはこれでさらっとしててありかもしれない。(追記:新聞連載してるとき打ち切られたらしい)話自体単純で起伏ないから、オチがオチてなくても気にならないというか、この本のいいとこはそこじゃないしな。ただ、やっぱり起伏がないと、一気に読むのは難しくて、途切れ途切れに読んでしまったけど。

 まあまあ楽しかった。想像してたのとまったく違い、痛快愉快な冒険物語でした。

 評価:★★★★

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宮本輝 - 避暑地の猫

 この記事読んだ後にこの本読んだらショックが半減しそうです。これから読む気の人がいたら注意。

 あー重かった。なんつーものを読ますんだ。読後はうわあとため息が漏れること必死の一品で、中学の同級生から勧められたけど、よくこんなの読めるなと思う。いや、すごく面白かったんだけど、でももう二度と目を通す気にはならないな。

 ストーリーは、軽井沢の別荘で管理人やってる夫婦の子として生まれた少年が、家庭に隠された恐ろしい秘密を暴いていくというもので、はっきり言ってその秘密というのが狂気の沙汰としか思えず読んでて頭が変になるかと思った。しかもそこに、17歳の主人公の、思春期らしく屈折した思考が入り乱れて絡んでくるから、威力倍増だった。

 はじめは「きっと秘密と言ってもたいしたことじゃなく、主人公の自意識過剰ってオチ、ほのぼのした話として終わるんやろう」と予想してたから、まさかここまで直球のカタストロフが来ると思っておらず、終盤は真っ青になりながらページめくった。アマゾンとかのレビューサイト見てると「軽井沢の美しい情景描写のおかげで、悲劇なのになんだかさっぱりした読後感」とか言われてるけど、いやいやそんなことないっすよ。むしろ軽井沢のしっとりしっとりした霧とかの描写が思春期の暗さと直接結びついて、ますます気色悪くなってる。まあ、きれいな文章なのは確かやけど。個人的にはあんまり好きでない文体だったかな。説明のわかりにくいところがあった。

 ストーリー展開はミステリー風味のわかりやすいもの、文学的表現とか隠喩とか伏線とかたくさん引いてあって、物語然とした物語になってる。ストレートに良質の小説で、だから衝撃の度合いも大きいんだろう。ギャグやミステリやホラーに逃げさせてもらえず、ひたすら人間ドラマとして悲劇がかかれてるからつらい。

 話のつくりがとてもうまいので、伏線を確かめるためにぜひもう一度読みたいんだけど、怖くて読めません。テーマとかもっと深いところまで読み取る余裕はなく、ただ濃厚すぎるストーリーにノックアウトされてしまった。まったく登場人物全員ばけものだな。でも、本当に恐ろしいのは、現実にこういう事件があるときくことです。人間ってのは、ほんとうに気持ちの悪い生き物だ!

 評価:★★★★

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阿部和重 - インディヴィジュアル・プロジェクション

 あれー、大学の知り合いに勧められた本って、なんでこんな外れるんだろう。高校のクラスメイトとか、塾で話すちびっ子とかのオススメは、ふつうに面白いのに。

 この『インディヴィジュアル・プロジェクション』は、かつてスパイ養成塾に通っていた男性が、一時の安定を求めて渋谷の映画館で仕事しながら暮らすんだけど、そのうちかつての因縁やらなんやらに巻き込まれていって困る話。主人公が書く日記の体裁をとった一人称文体が大きな特徴です。サークル同じ人から勧められたけど、好きになれんかった。

 話自体はそこまで悪いものでないと思う。ただやっぱりアクが強すぎて、おれと合わなかった。まず、文章が硬すぎる。文学的表現も色気もほぼなしのひたすらハードな文体はかなりつらい。

 それと、なんか哲学的な部分に重きを置きすぎのようにも感じた。結局何が本当で何が嘘かわからないような、日記を書いてる主人公自身の正気や存在が疑われるような展開に持っていくのは嫌いじゃないし、現代思想好きな人とかはまりそうな主題の本だとは思う。けど、おれみたいに思想のことは何もわからず、テーマを読み取るなんて高尚なこともなかなかできない人間には、ストーリー性を途中で放棄したようにしか感じられない。「いやそれはお前の勉強不足だろ」って言われたら、まあその通りなんだけど、でもこれはあくまで小説だから、おれも興味深い「お話」を読む気で読んだし、まずストーリーや文体やユーモアにある程度共感できないと思想的な部分までは入れない。たとえば、主題と関係ないからといってスパイ塾での訓練の具体的な様子がほとんど描かれてなかったり、単純な暴力や性の描写で関心を引こうとしてたり、オチがあれすぎたりするのは、手抜きに思えてしまい興ざめした。あと、これを言ったら元も子もないけど、この本の主題は(おれが読み取れた範囲では)そんな斬新なものでもなかった。

 ただ楽しいばかりが本ではないし、「エンタメ性が足りない」って怒るのは頭の悪い読者の証拠だろうけど、やっぱりこれはないわあ。と、悪口ばっかりになってしまったけど、良いところがなかったわけではありません。まず「文体硬すぎ」だの「単純な暴力や性」だの書いたけど、これは逆に、渋谷の街の乾いた雰囲気を出してて、好きな人は好きだろうと思った。あと話が進むにつれ、主人公の悩みの種やそれにまつわる情報というのが、どんどん複雑に膨れ上がっていくんだけど、その様子が現在の情報社会にそのまま通じていて面白かったです。

 まあこの本、阿部和重の著作のなかでも特にハードなものらしく、初めて読むには適さないらしいということなので、それがいちばんの問題かもしれない。機会があればまた他のを読んでみます。

 評価:★★

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貴志祐介 - 青の炎

 本にしろ音楽にしろなんにしろ、出会うタイミングってほんと大事だな。たとえば、グリーンデイとかゴーイングステディとか、若いうちに聴かないと共感できないだろうし。全然知らないけど、乙一なんかもそのタイプだと聞きます。戸川純の曲も、筒井康隆の本も、大人になってから触れたのでは、おれも好きになってたか少し怪しいと思う。

 こんなことを言い出すのは、『夜のピクニック』のエントリにコメントを頂いて、そこでそういうお話が交わされたからです。で、『夜のピクニック』については、「若いうちに読んでてよかった」って感じなんだけど、なら逆のパターンはないかなと考えたら、あった。この『青の炎』という小説がそれ。

 これは確か、中2か中3のときに読んだんだった。父親が「何か本を買ってやろう」ということなので、当時映画化して有名だったこれを適当に選んだ記憶がある。休日の午前中から一気に読み始めて、夕方ごろに読み終わった。ろくに長編小説を読んだ経験がなかったのに、よくそんなハイペースで読んだなと思う。しかも、その内容がまた重い。だいたいこんな感じ:「平和な母子家庭にかつての男が押し入って、家庭が崩壊しそうになる。そこで小さな幸せを守るため、少年は男を殺そうと決意する」。

 家庭の危機→少年が殺意を抱いて→異様に綿密な計画を練り倒し→緊張で死にそうになりながらなんとか実行→ばれるんじゃないかと恐れながら、全神経を削って真相を隠蔽しようとするという、全編にわたって息の詰まるようなストーリー展開で、読んだことないけど『罪と罰』とかこんな感じなんですか、読んだ後はものすごい疲れた。日曜日の夜、サザエさんのエンディングテーマ聴いた後みたいな、あの虚脱感がしばらく抜けなくて、へこみっぱなしだった。

 確かに面白かったし、青春小説としてもミステリとしても超一流、いま思い返せば、こんな大人びた本中坊で読みきったおれすげーみたいに自己満足できる。でも、初めて読む長編小説としては明らかに重すぎだった。そのせいで、高2で星新一に出会うまで、長編小説はほとんど読めなくなった。たぶん、別のもっと軽いのを読んどけば、中学生のときから本読み少年になれたんじゃないかと思う。惜しいことしたなあ。

 たぶん、いま『青の炎』読み返せば新しい感動があるんやろうな。でも、いまさらまた読む気にはなれない。あと、貴志さんの別の小説も、いまだに読んだことない。ほんと、出会う時期が悪かったと思う。

 評価:★★★☆

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西森博之 - 道士郎でござる

 この漫画すごい面白かった! 西森博之は小学生のときから知ってたけど(コナン買ったら巻末に広告が載ってた)、読んだのは最近になってから。もっと早く読んでたらよかったな。

 内容は、アメリカ育ちの自称武士が暴れまわり、それに巻き込まれた人たちが段々ハッピーになっていく不良系コメディー。(本当の)主人公の成長が見どころです。

 西森さんの漫画の雰囲気はすごいなごむ。お話の展開そのものも、不良がたくさん出てくるけど妙に常識的で可愛らしいとこも、下ネタ全然使わないとこも、全部がさっぱりしてて気持ち良い。単に毒がないってわけじゃなく、本当に「腹黒い感じ」「いやらしい感じ」が紙面から伝わってこない。絵もアク強くなくあっさりしてるし。読んだら全身の血がきれいになりそうなくらい、ほんとなごむ。

 ついでに言うと、いまサンデーで連載中の『お茶にごす』もおもしろい。『お茶にごす』に比べてこちらはドタバタ色・ギャグ色が強いので、低めの年齢層にもおすすめ。しかも、完結済全8巻なので、経済的にもお話の丈的にもちょうど良いです。

 最近漫画読んでないから、また買い集めてみようかと思った。

 評価:★★★★☆

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谷崎潤一郎 - 痴人の愛

「ナオミ」なる超絶美少女に弄ばれ破滅していく男の話。

 なんとなしに買ったら完全に純文学作品だった。とにかく文章がかたかった。けど、そこまで読みにくくはなかった。三島由紀夫ほどじゃないけどきらびやかな描写が多くて、お上品な言葉遣いしてるけど、妙に生々しいとこのある文体だった。つまり、純文学にしては若干俗っぽい文体だったので、そんなに高尚なお話だという先入観なしに読めたということ。

 話もやっぱり高尚なものでなく「きれいな変態小説」という感じだった。主人公の男性がナオミにどんどん征服されてく様がもうマゾヒズム趣味全開で、作者の人楽しんでんなーと思ってしまった。

 変態小説と言ったけど、純文学なので、露骨に性的な描写はそんなない。あくまでおしとやか。ただ、なんか話運びといい、描写のひとつひとつといい、なんかいやらしい雰囲気がする。これは読んだ人がみんな言うことだから本当。あと、ナオミさんの美貌に関する描写は、それが話のメインだといわんばかりにたくさんある。しかもどれもやたらピンポイントかつ詳細(足の美しさだけ取って何行も使ったり)で、それを上に書いたようなお上品な文体で描くものだから、偏った嗜好性をびんびん感じました。

 変態趣味とか女の人への執着とかを、ここまで巧妙にラッピングして芸術にできるのはすごいと思った。さすが歴史に名前が残っているだけある。まあ昔の小説ってそんなもんばっかりかもしれないけど。正直話自体は、いまとなってはベタだけど、この文章のいやらしさだけはずっと残ると思います。

 評価:★★★☆

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東野圭吾 - 容疑者Xの献身

 いま読み終えたとこやし、せっかくやからソッコー感想書く。明日からまた忙しいしなー。

 映画化されて、直木賞もとった東野圭吾の大ベストセラー。ガリレオシリーズ。知らん人おらんやろ。去年は本の売り上げ一位やったらしいし。こんな超流行もん手にとるなんて、あまのじゃくのおれには本来ありえへんけど、知り合いの子どもが好きっていうから、まあ試しに読んでみた。

 おー、やっぱガキやと思って子どもの好み舐めたらあかんな。最近の小学生も、なかなか難しい本読んでる。

 中身は、ミステリーに見せかけて感動もの。理系の天才同士が犯人側VS推理側となっていろいろ駆け引きする話。ミステリーの要素と恋愛感動小説の要素がきれいに合わさってて、なるほど流行りそうと思った。最近は音楽にしろ小説にしろ、複数のジャンルまたいだような、ちょっとボーダレスなやつが流行るのか。あんまそういうの、好み違うけど、これはよかった。殺人起こるの早いし、解決編もさっぱりしてわかりやすい。

 例によっておれはほとんどトリックに気づかんかったし、最後、タイトルの「献身」の意味がわかってぞーっとした。なかなかせつない。
 ただ、いくらなんでも警察が無能すぎるという考えは、読んでてちらっと、ちらっとだけのぞいた。まあ、館の中に閉じ込められるわけじゃないから、警察は絶対出てくるし、これはある程度仕方ない。でも、うーん、気になる人は、「このトリック、警察だませるほどうまくいかない」と思いそう。じっさい、作者も言い訳らしい描写をしてたし。個人的には、自分が本格ミステリ人間ではないので、別にかまわんという感じだった。それより感動話としての面白さのが上。

 あと、文章はほとんど無味乾燥で、登場人物もほぼ完全に駒扱いだった。変に味つけられてうっとうしい思いするよかよっぽどいいし、なにより読みやすかった。ただ、これも不満な人にとっては相当不満だろうと思う。天才物理学者ガリレオ先生も全然天才らしいところなかったしな。

 よく考えたら中身ないような気もするし、はまれはしなかったけど、こういうのもたまにはいいなあ。すこし時間に余裕があるとき、また東野圭吾読んでみよう。

 評価:★★★

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恩田陸 - 夜のピクニック

 これ、高2のとき、学校の先生に勧めてもらって読んだ本。といっても、読んだのは大2のときで、三年くらい間隔があいてる。なんでかわからんけど、人に勧めてもらった本とかCDって、手に取るまでに時間かかるとき多いねんな。不思議。

 なかなかよかった。流行もん嫌いなあまのじゃくのおれも、ふつうに感動して、読んだあと「おおー」「ほー」とかため息ついてた。内容は、まあ甘酸っぱい青春もの。高校での「歩行祭」のお話。
 読んでるときの気分をたとえるなら、修学旅行や部活動の合宿で、夜、友達と深めの話をしてるときの、あの甘ったるくて良い気分をぎゅっと凝縮したような感じか。若返ります。

 まあ、すこし少女漫画チックな都合のよさとか、文章の雑さとかは感じた。でも、そんなん気にならんくらいストーリーはテンポいいし、さわやかだった。
 キャラクターは、いまどきの流行漫画っぽい。人間のどろどろしたとこを感じさせない清潔な性格をしすぎで、好みがわかれそう。おれはもともとそういうの好きなんで、すんなり受け入れられたけど。

 個人的にこの本は、上にも書いたけど学校の先生に勧められたから、その分の感謝が結構ある。というのも、おれ高2のときは思春期の少年らしく、人間関係とかですこし疲れてた。本勧められたときはあんま読む気なかったし、「どうせ流行作品やろ」とすかしてなんも感じひんかった。けど、いまになって見てみると「なるほど、先生はあのときおれの心理状況を考えてこれ勧めてくれたんやな」とか思えて、なかなか感動する。

 まあ、先生が何思って勧めてくれたんか、ほんとのところはわからないけど、おれはこういうとこ読ませたかったんかなって思ってる。たとえば、はやく思春期のつらさから逃れようとして大人ぶる主人公に、主人公の友達が「つらい時期でもそれは必要な時間だから、もっといまを楽しんで、はじけて過ごせ」みたいな説教をするシーン、ここらへんのくだり、すなおによかった。

 ちなみにそのとき、主人公の友達があわせてこんなこと言う。「昔いとこから勧めてもらったファンタジーの本があって、最近になって読んだ。そのとき、『しまった』と思った。昔に読んでおけば、それはいまの自分を構成する大切な要素になっていたはずなのに。考えてみれば、いとこは自分の年齢や精神状況を考えて、当時あれを勧めてくれていたんだ。タイミングを逃した。昔に戻ってこれを読もうと思っても、もう遅い。(だからお前はいまの時間を大切にしろ)」。かなり略してるけど、だいたいこんな感じ。

 おれはこの「夜のピクニック」、勧められてから3年開いて読んだけど、なんとかぎりぎり間に合ったと思ってる。先生の意図は(たぶん)汲めたし、純粋に読んでておもしろかった。てかむしろ、思春期らしく共感して癒される意味と、年とってから思春期を懐かしむ意味の両方で楽しめた。ちょうど適正年齢ど真ん中やったんかも。

 この本は適正年齢が狭そうと思う。思春期ど真ん中あたりから、大学生はじめまで、あと、それなりに年とった人もいけそう。逆に後期大学生〜30代だと、文章や話の稚拙さなんかが目に付いて、ダメかもしれない。少女漫画じみたのが嫌いな人、まさに悩み抱えてる最中の高校生なんかも、「なんだこの奇麗事は」と言って蹴飛ばしそう。まあ、これは単なる個人的な感想なので、もちろんこれに当てはまらない人もたくさんいるだろうけど。

 というわけで、総括すると、雑なところはあるものの、全体としてはとても良質な青春物語でありました。それと、学校の先生、ありがとうございました。

 評価:★★★★

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